中国輸入で関税がかからない方法はある?関税のしくみについて
これから中国輸入転売を始めようと考えている方の中には、関税が複雑で新しい1歩が踏み出せないといった方もいるのではないでしょうか。
中国輸入転売は代行業者を通して始めることがほとんどで、実際の関税は商品到着時に宅配業者に支払うことが一般的です。しかし、関税は使用する目的や種類などによって費用が異るので利益計算する上で把握しておきたいポイントの1です。そのためこの記事では中国輸入でかかる関税について詳しく解説しています。
この記事を読んでわかること
- 個人輸入と商用輸入の違いと関税
- 簡易税率と実行関税率の違いと税率
- 関税以外にかかる費用
- 通関で失敗しないためのポイント
個人輸入で通関手続きをする基準についても紹介していますので、最後までご覧になって参考にしてみてください。
そもそも関税とは?
そもそも関税とは輸入品に対して発生する税金のことです。
この関税は国の法律で定められた国定税率によって決まっています。国定税率には大きく分けて2種類あり、長期的に定められている「関税定率法」。海外や国内の事情などにより一定期間適用される「関税暫定借置法」があります。
基本的に輸入でかかる関税は国定税率をもとに計算されますが、WTO協定や加盟国、経済連携協定を結んでいる国に対しては、国定税率よりも低い税率が設定されていることもあります。また、輸入するジャンルやカテゴリーでも関税は異なり、細かく分けると商品の材質によっても変わることがあるのです。
また例外として、発展途上国の経済発展を支援するため、先進国がその国からの輸入品に対して低い関税率や無税を適用する特恵関税などもあります。
輸入品に対して関税をかけることで国内産業を守ったり、海外企業の誘致をしたり、特恵関税で発展途上国の発展を援助したりといったことが目的になっています。
実際に中国から商品を輸入する場合、「個人輸入」と「商用輸入」で関税は大きく異なることを覚えておきましょう。
個人輸入と商用輸入の違いについて
中国から仕入れた商品の輸入には「個人輸入」と「商用輸入」の2通りがあります。
個人使用を目的とした輸入は「個人輸入」。販売目的で商品を輸入する場合は「商用輸入」となっており、商用輸入よりも個人輸入のほうが関税は低く設定されています。
個人輸入で発生する関税
個人輸入の定義は明確に決まっていませんが、海外の製品を個人使用目的で小売店やメーカーなどから輸入することを指します。商品を個人で使用する場合のみの輸入方法と考えてください。
商品代金の60%×関税(実行関税率or簡易税率)で計算したものが発生する費用です。
商品代金の60%にかける関税については、課税価格が20万円以上では実行関税率となり、20万円以下の場合は簡易税率が適用されます。
海外の製品を個人で使用する場合は個人輸入となるので、商品の確認のため輸入代行業者を通してサンプルを仕入れる場合は個人輸入でも問題ないでしょう。ただし商品を仕入れる数量によっては税関で商用輸入扱いになる可能性もあります。目的に応じて個人輸入を利用するようにしてください。
課税価格が10,000円以下(商品代金16,666円)の場合は一部の製品を除いて免税となるので覚えておきましょう。
一部の商品
- 革製のバック
- パンスト
- タイツ
- 手袋
- 履物
- スキー靴
- ニット製衣類等
※個人使用目的で利用されるギフトとして居住者に贈られたものである場合は例外(酒税とたばこ税は免税にならない)
商用輸入で発生する関税
基本的に中国輸入ビジネスでは商用輸入を利用します。商用輸入は販売目的で商品を輸入することを指しており、輸入代行業者を利用する場合であっても同じです。個人輸入以外はすべて商用輸入になります。
この「商用輸入」では商品代金・保険料金・送料・その他の費用の合計に対して関税がかかることを覚えておきましょう。
商用輸入で発生する関税
商品代金(送料・保険・その他経費含む)×100%×関税(簡易税率or実行関税率)
商品代金が20万円以下の場合は簡易税率が適用され、20万円を超えると実行関税率が適用されます。
簡易税率と実行関税率では、税率が定めらている品目数が異なり、簡易税率は7品目と簡単に把握できますが、実行関税率は種類が多すぎるので税率を調べなければなりません。
実際に商用輸入で通関業務を行うのは通関業者なので、関税を計算する必要はありませんが、利益計算で事前にある程度の費用が知りたい場合は下記のポイントを抑えておきましょう。
関税の計算に必要なポイント
- 商品単価×数量×関税率
- 配送料金・保険料
- 外国通貨を円換算(公示レートが使用される)
まずは中国の通貨を円に換算します。為替は適用期間が決まっており、6日ごとの平均値を税関で確認することができます。輸入申告ではこの平均レートを使用して申告してください。平均レートを使用して円に換算し、商品価格×数量を計算します。船会社を利用する場合は海上運賃と海上保険をプラスしますが、こちらも日本円に換算することを忘れないようにしましょう。
自分で計算することもできますが、商品の種類が多いほど計算が複雑になるので、関税の計算ツールを提供しているサイトを利用して、関税と消費税を把握するほうが良いでしょう。この時、20万円以下と以上では関税率が異なるので注意してください。
簡易税率と実行税率の違いについて
仕入れる商品の課税価格によって簡易税率または実行関税率が適用されます。個人輸入でも商用輸入でも簡易税率と実行関税率は共通しているため覚えておきましょう。
簡易税率の品目と税率
課税価格が20万円以下の小額輸入貨物に対して適用される簡易税率は下記の通りです。
簡易税率表
品目〔具体的な品目例〕 | 関税率 | |
---|---|---|
1 | 酒類 (1) ワイン (2) 焼酎等の蒸留酒 (3) 清酒、りんご酒 等 | 70円/リットル 20円/リットル 30円/リットル |
2 | トマトソース、氷菓、なめした毛皮(ドロップスキン)、毛皮製品 等 | 20% |
3 | コーヒー、茶(紅茶を除く)、なめした毛皮(ドロップスキンを除く) 等 | 15% |
4 | 衣類及び衣類附属品(メリヤス編み又はクロセ編みのものを除く) 等 | 10% |
5 | プラスチック製品、ガラス製品、卑金属(銅、アルミニウム等)製品、家具 等 | 3% |
6 | ゴム、紙、陶磁製品、鉄鋼製品、すず製品 | 無税 |
7 | その他のもの | 5% |
出典 : customs.go.jp
簡易税率は7品目と実行関税率に比べて少なく分類されているため、一度税率を把握してしまえば、その後の計算に手間がかかりません。
また、上記の表を見てわかるように毛皮製品の税率が20%と高く設定されているので仕入れ商品を選ぶ際には避けたほうが良い品目となっています。
実行関税率の分類について
商品代金(送料・保険・その他の経費)の合計課税価格が20万円以上の場合に適用されるのが実行関税です。
実行関税率の一部分類
- 分類第 1類動物(生きているものに限る。)
- 第 2類肉及び食用のくず肉
- 第3類魚並びに甲殻類、軟体動物及びその他の水棲無脊椎動物
- 第 4類酪農品、鳥卵、天然はちみつ及び他の類に該当しない食用の動物性生産品
- 第 5類動物性生産品(他の類に該当するものを除く。)
引用:実行関税率表(2022年1月1日版) : 税関 Japan Customs
このように実行関税率は21部で構成され97分類に税率が分けられているので、詳細を把握することは難しいでしょう。
また、実行関税率は定期的に更新されることもあり、一度覚えた税率が変わることもあります。そのため、税関のホームページに記載されている関税率は参考程度に確認しましょう。
実際の関税については各税関の相談窓口に電話して確認することをおすすめします。
中国輸入で関税がかからない方法ってあるの?
中国輸入で関税がかからない方法はありませんが、実際に販売する商品は「商用輸入」を利用する。仕入れ商品の確認をしたい場合は「個人輸入」といったように、輸入方法を使い分けることで関税を抑えることも可能です。
個人使用では商品価格に60%の課税ですが、商用輸入は商品価格に100%課税されることに加えて保険代金と国際送料なども課税対象に含まれます。商用輸入の定義は曖昧で輸入する数量や商品の価格、一定期間に繰り返し購入されていないかなど、複数の要因を総合的に判断されるので、個人輸入でサンプル等を仕入れる場合は注意が必要です。
また、個人使用目的で輸入する商品に限っては1度の輸入金額を20万円以下に抑えるようにするだけで簡易税率で商品を輸入することができます。実行関税率ではかなり複雑に税率が分かれていますが、簡易税率は7つの区分にしか分かれておらずコストを抑えて輸入することもできるでしょう。ただし、商品の分類や品目で税率が異なるので、事前に確認しておく必要があります。
商用輸入では送料も関税の対象になっているので、仕入れ商品の重量を把握して複数の商品をダンボール1つにまとめて国際送料を抑えるなど工夫してみてください。
中国輸入で関税以外にもかかる費用一覧
中国輸入で関税以外にもかかる費用には下記のものが挙げられます。
- 商品代金
- 中国国内送料
- 国際送料
- 保険代金
- 消費税
- 中国輸出通関手数料
- 税関手数料
関税以外にかかる費用は上記の通りで、商品代金はまとめて発注することで1つあたりの単価を抑えることが可能です。中国国内送料とは輸入代行業者を利用した場合に発生する費用で、中国セラーから代行業者の倉庫に届けるための送料となっています。中国国内の送料は各代行業者で異なるので比較検討してください。
次に国際送料についてですが、代行業者の倉庫から日本に届くまでの費用で、輸送方法や商品の重量。代行業者によって変わってくるため一概にはいえませんが、費用を抑えたいなら船便を利用しましょう。届け先や段ボールの個数で送料が変わるので、1度で必要な商品をできる限り仕入れることをオススメします。ただし、到着までに10から15日と時間がかかるため注意が必要です。
保険代金は国際便で送られてくる荷物を補償するもので、利用する輸送方法や代行業者によって金額が異なります。例えば物流サービスの大手FedExでは100ドルまたは送料算出重量1㎏につき20ドルのどちらか大きい方の金額までは保険に加入しなくても補償されるようになっています。また、日本の保税地域から自宅に届くまでの保険は、配送会社の任意保険に加入しなければならない点に気を付けてください。保険に加入したい方は通関会社に連絡しましょう。
消費税は商品代金と国際送料、関税に10%かかり、税関手数料は課税対象の荷物1箱につき200円の費用。中国輸出の際に発生する通関手数料として1箱4元かかります。
仕入れ商品の金額や送料だけを確認して利益計算をしてしまうと思ったように利益を上げられないといったことが起きるので、初めの内はできるだけ細かく金額を把握するようにして失敗を防ぎましょう。
個人輸入での通関手続きについて
輸入代行業者を利用せずに中国から個人輸入する方は下記3つの輸送方法によって税関での手続きが異なります。
- 国際宅配便
- 一般貨物
- 国際郵便
国際宅配便を利用する場合、海外の小売店やメーカーに発注・送金するため、手続きは通関業者が代行してくれます。一方国際郵便では無税や免税品なら日本郵政から受取人に直接配達され、課税価格が20万円以下の場合、賦課課税方式が適用されます。関税における賦課課税方式とは税関長が関税額を確定する方式のことです。そのため商品の関税を正確に知りたい場合は税関に問い合わせるしかありません。
課税品は「1万円以下」「1万円を超え30万円以下」「30万円を超えた場合」で税金の納付方法や商品の受け取り方法が変わってきます。
国際郵便課税品
税金の合計額が1万円以下の場合
税関外郵出張所から受取人あてに「国際郵便物課税通知書(以下、課税通知書)」と、郵便物が直接配達されますので、その場で税金の納付を日本郵便株式会社に委託すれば受取ることができます。
ロ 税金の合計額が1万円を超え30万円以下の場合
日本郵便株式会社から、郵便物の到着と税額等が電話などにより連絡されます。郵便物は、以下の方法で受け取ることができます。
A.郵便物の配達を希望する場合
配達を希望すると、郵便物が直接配達されますので、その場で税金の納付を日本郵便株式会社に委託すれば受け取ることができます。
B.郵便物の配達を希望しない場合
日本郵便株式会社から課税通知書が送付されますので、課税通知書を持参のうえ、指定された郵便局等へ行き、納付書の交付を受け、銀行の窓口または郵便局の貯金窓口で税金を納付すれば、郵便物を受け取ることができます。
ハ 税金の合計額が30万円を超える場合
課税通知書が送付されますが郵便物は配達されません。課税通知書を持参のうえ、指定された郵便局等へ行き、納付書の交付を受け、銀行の窓口または郵便局の貯金窓口で税金を納付すれば、郵便物を受取ることができます。
(注1)課税品の場合は、受け取る際に通関料(日本郵便株式会社の取扱手数料)が別途必要です。
(注2)課税通知書に記載された税額などについての疑問は、税金を納付する前に通知書に記載された税関外郵出張所へ申し出てください。また、郵便物が一定期間内に引き取られないと差出国へ返送されることがありますので日本郵便株式会社又は郵便局にも連絡してください。
出典:個人輸入通関手続 : 税関 Japan Customs
船会社や航空会社を利用して「一般貨物」として商品を輸入する場合、輸入通関手続きが必要です。商品が保税地域に届くと航空会社等から連絡が入ります。通関手続きに必要な書類を揃えて自分で通関手続きを行うか、通関業者に代行してもらいましょう。通関業者に依頼する際には通関手数料や国内送料などがかかり業者によっても料金は異なるため事前に確認してください。
このように通関手続きは複雑に感じられますが、実際に自分で行うことはほとんどありません。小規模で輸入する場合は配送会社が関税の計算や手続きを行ってくれますし、20万円を超えるような場合でも通関業者に手数料を支払って関税の計算や申告を代行してもらうことが一般的です。しかし、通関業者に依頼する場合、通関手数料がかかるいため、経費を節約するために自分で手続きを行う方もいます。
個人輸入で通関手続きを依頼する基準
個人輸入で通関手続きを依頼する基準は1度の仕入れ額が20万円を超える場合です。20万円以下では簡易税率が適用されるので特別な手続きは必要なく自宅に商品が届きますが、20万円を超えると申請が必要です。
個人で手続きをすることもできますが、通関代行サービスを利用することもできます。自分で申告する方は仕入れた商品が保管されている管轄の税関に申告しましょう。万が一申告を間違っても荷物を受け取らなければ申告を修正することもできます。
販売目的で個人使用が疑われると送金証明書や破棄証明書など各種の証明書が必要になるのでインボイスを申請する際には注意が必要です。
通関で失敗しないために気をつけたいこと
税関では内容や数量を正確に申告することが重要です。そのためインボイスをしっかりと明記してもらうことやトラブルを避けるようにセラーに対して必要なことを伝えておきましょう。
インボイスとは
インボイスは納品書と明細書などを合わせたもので、商品の種類・数量・価格や誰が誰に送っているのかといった内容が記載されているものです。
実際に起きたトラブルではセラーの好意で商品以外の品がダンボールに入っていたケースがあります。セラー側の好意なので仕方ありませんが、インボイスに書かれている以外のものが入っている場合、本来届くはずの商品もストップしてしまうため、セラーに対して書類に記載のあるもの以外は送らないように念押ししておく必要があります。個人輸入ではこうしたトラブルがあるため、商用輸入する場合は代行業者に依頼しましょう。
中国輸入トラブルで多いアンダーバリューについて
中国輸入でよくある税関トラブルにアンダーバリューがあります。アンダーバリューとは関税を抑えるためにインボイスの金額を実際よりも低く申告して関税を抑える行為のことです。インボイスは輸出側が作成する書類のため、商品単価や他の金額を実際の取引額よりも低く記載することができてしまいます。例えば実際には1個100円の商品を50円と記載してしまえば関税を半額に抑えられる訳です
アンダーバリューはこれだけでなく、無償商品と通常の商品を合算して税関に提出するケースもあります。中国輸入では数百単位で商品を仕入れることもあり、中には不良品が混ざっていることもありますが、返金に応じてくれない業者は商品を無償で提供する形で返金の代わりとする場合があるのです。無償で受けた商品を輸入する際に、他の商品と合わせて計算することで1個あたりの単価を偽って関税を抑えることができます。
このように中国輸入では輸入する側が気をつけていなければ、故意でなくてもアンダーバリューになるケースが発生してしまうこともあるでしょう。「こちらが申告しなければバレないんじゃないの?」と考える方もいますが、それは間違いです。
輸入代行業者に通関対策をすすめられても断ろう
中国輸入ビジネスでは中国の卸サイト等を利用するため、輸入代行業者を利用することが一般的です。代行業者の中には好意で通関対策をすすめてくる場合がありますが、アンダーバリューはバレるので断るようにしましょう。
税関では輸入者の情報をすべて把握しており、「中国から届くこの商品の平均単価はいくら」といった細かい情報も残っています。仕入れ先が多少違う場合でも相場はほとんど変わらないため、商品単価が低い場合、税関職員による詳しい検査が行われるのです。
また、税関は申告が正しかったかどうかの事後調査をするため、海外との入出金記録とインボイスを照らし合わせて相違ないか確認しています。当然入出金記録にはアンダーバリューする前の記録が残っているため、簡単に見つかってしまうという訳です。
上記のことからも中国から商品を輸入する際には、単価や数量、為替など、書類に記載する内容に間違いがないのかしっかりと確認して税関で止められないように注意しましょう。
中国輸入の関税についてまとめ
この記事では中国輸入の関税について解説しました。
中国輸入では個人での使用を目的とした輸入手段の「個人輸入」と販売目的で輸入する「商用輸入」があります。
基本的に中国輸入では商用輸入をすることになるため、商品代金・送料・保険・その他経費を含めた金額の100%に関税がかかることを覚えておきましょう。
また、関税には課税価格の合計が20万円以下で適用される簡易税率と、20万円以上で適用される実行関税率に分けられています。
輸入する商品の種類が増えるほど、税率も複雑になってくるので、一度輸入した商品の税率はパソコンやスマホで管理しておきましょう。